その朝、海は穏やかに見えた。ほとんど人を油断させるほどに。
砂浜に立ち、次々と寄せてくる小さな波を眺めながら、心臓はまるでレース前のように高鳴っていた。
手に持つボードは、いつもより大きく感じた――いや、もしかしたら勇気がまだ半分しかなかったのかもしれない。
「とりあえず、やってみよう」
そう自分に言い聞かせた。
海に入った瞬間、冷たい水が一気に目を覚まさせる。
ここは快適な場所じゃない。
最初の波が来て、急いでパドルし、慌てて立ち上がり……バシャッ!
まったく格好つかずに転んだ。
鼻に海水が入り込んだのに、不思議と笑ってしまった。
面白かったからじゃない。失敗は、思っていたほど怖くなかったからだ。
二回目、三回目――また転ぶ。
それでも立ち上がるたび、恐怖は少しずつ好奇心に変わっていった。
そしてついに、完璧なタイミングで一つの波が来た。
パドルし、ゆっくり立ち上がる。膝は震えていたが、ボードは滑り出した。
風が顔に触れ、海の音が遠のき、世界が数秒間止まったように感じた。
立てた。
完璧じゃない。長くもない。
でも、思わず大きく笑顔になるには十分だった。
また転んだとき、私は気づいた。
新しいことに挑戦するのは、最初から上手くやることじゃない。
海に入る勇気、転ぶ勇気、そしてもう一度挑戦する気持ち。
海で学んだのは、小さな勇気が大きな物語になるということ――
一つの波、また一つの波ごとに 🌊
